本記事ではどのような場合にドローンの飛行許可が必要となるのかについて、航空法の観点から記載します。航空法に違反した場合には罰則が科せられることがありますので、しっかりと認識しておく必要があります。
航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがある空域を飛行させる場合
空港等の周辺空域(A)
空港やヘリポート等の周辺に設定されている空域は航空機の離陸及び着陸の安全を確保するため、許可が必要です。
緊急用務空域(B)
警察、消防活動等の緊急用務を行うために、航空機の飛行が想定される場合に設定される空域です。原則飛行禁止のため、基本許可は下りません。なお他の許可があっても、緊急用務空域を飛行させることはできません。
地表(水面)から150m以上の高さの空域(C)
地表(水面)から150m以上の高さの空域を飛行させる場合は、事前にその空域を管轄する管制機関との調整後に許可申請をする必要があります。(管制機関については国土交通省のHPに連絡先が掲載されております。)
「地表から」とは、たとえば標高1,000mの場所では垂直方向に150mまでは飛行できるので、標高1,150m地点までは飛行できることになります。
ここで注意が必要なのが、急激な崖になってしまっているような場所では、崖の下からの高さが基準になるため、無意識に150m以上の空域を飛行させてしまうことがあります。そのような懸念がある場合には、必ず事前に飛行許可を受けましょう。
人又は家屋の密集している地域の上空を飛行させる場合
人口集中地区の上空(D)
人口集中地区では、ドローン墜落時に人にけがをさせる可能性が高いため、許可が必要となります。人口集中地区は「DID(Densely Inhabited District)」とも呼ばれています。特に都市部で飛行させる場合には、必ず必要になる許可です。ネットで「国土地理院 DID」で検索すると出てくると思うので、飛行させる場所が人口集中地区になっていれば許可申請が必要です。
飛行方法による承認を必要とする場合
夜間での飛行
夜間は周囲の人や障害物が見づらく、接触事故や紛失の可能性が高くなるため、事前の承認が必要です。
国立天文台が発表している夜間(日没~日の出)に飛行させる可能性がある場合には、必ず申請しましょう。
目視外飛行
操縦者が直接目で見える範囲以外を飛行させる場合にも承認が必要となります。たとえ補助者が監視していたとしても、操縦者からドローンが目視できなければ目視外飛行となります。
人や物件(建物・自動車)との距離が30m未満の飛行
ドローンは飛行するためにプロペラが高速で回転しています。また速度も出るため、接触してしまうと危険です。そのため、安全な間隔として距離30m以上が設定されています。物件として見落とされやすいのが電柱です。農業用ドローンで農薬を散布する場合など、田舎でも今はどこにでも電柱は立っていると思うので、少しでも可能性がある場合には承認申請しておく必要があります。
イベントの上空を飛行させる場合
お祭りや野外フェスなどのイベントで、不特定多数の人が集合する場合には、事故が起きた場合の被害が大きいため、承認が必要となります。
危険物を輸送する場合
基本的には、農業用ドローンで農薬散布をする際に必要となる申請です。ドローンに農薬を積載して散布することになりますので、その農薬が危険物になっています。農薬以外にもガスや火薬等も危険物に該当します。(ガスや火薬は一度も申請したことは無いですが・・・)
物件を投下する場合
こちらも基本的には農業用ドローンで農薬を散布する際に必要となる申請です。農薬(粒剤・液剤)などの危険物を投下する場合はもちろん、屋根等の高所を洗浄するために水を散布するような場合にも必要となります。
航空法に違反した場合の罰則
1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される可能性があります。
注意点(100g未満の機体でも許可が必要となる場合)
令和4年6月20日から重量100g以上の機体が「無人航空機」として規制対象となり(100g未満は「模型航空機」に分類)、本記事でも無人航空機を対象として記事にしました。しかし100g未満の機体でも、空港周辺で飛行させたり、高高度で飛行させるような、「航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為」に該当する場合は、航空法第134条の3の規制を受けるため、飛行許可が必要となる可能性があります。
まとめ(安心・安全にドローンを飛ばすための許可)
以上のとおり、国は国民の身体及び財産を守るため、航空法により一定の基準を規定しています。その基準に合致しない場合に、「操縦者の力量」や「機体の安全性」などを確認し、本当に飛行させても良いかどうかを判断するために飛行許可が必要となっています。本記事で紹介した基準を参考にして、適切な飛行許可を取得するようにしましょう。